Kさん、という生徒がいる。
私のトレード塾の生徒だ。
大柄で嫌味のない、根が正直でまっすぐで素直な人だ。
彼は、私が以前ちょっとした縁で依頼を受けた、ファイナンシャルプランナー3級の資格試験講座の講義のときの生徒だった。
で、縁と彼の志を聞いて、私の塾に入ってきたが、なにせとにかく自信がないタイプの人だった。
あまりにも発言にネガティブが目立つので、昨日いろいろ彼の話を聞き、何がわかってて何がわかってないのかをしっかり聞いた。
2時間ぐらい話を聞いたかもしれない。まあこういうことはよくある。生徒さんはみんな悩む。トレードがうまくいかないとき、想定通りに行ったとき、また自分でこれはスゲェというような結果が出たときなど。
彼の悩みはツールへの理解だった。難しすぎる、というのだ。まあ、確かに、私の作った電子書籍ツールは、現代ファイナンス理論に基づいて作っているのできっちり中身まで理解しようとすると割と大変だったりする。ぱっと見複雑怪奇なことをしているように見えるからだ。膨大な関数を書き、1つのセルを変更すれば一気に数万セルが変化して、たちまち分析にかけようとした銘柄の性格がはっきりし始める。
だが、その使い方も見方も、ちゃんと勉強していなければ絶対にどう読み解けばいいのかさっぱりわからないだろう。だから、彼が難しいと言ってきたツールの使い方がわからない、というのは正論だ。
正論だが、難しいで終わらせていては進歩がない。私はそこをお話して何がわからんのかとにかく聞きまくって、徹底的に彼が理解していないところをつぶしていった。
講義が終わると、
「CHOJIさん、ありがとうございました。難しいと思い込んでました。やっとなんか、スタートラインに立てた気がします」
彼はそうつぶやいた。
出来ないと決めてしまえば何も叶うわけがない。出来ないと決めたくなるのは、自分に自信がないからだ。失敗するのが怖いからだ。
でも、人間は失敗するのだ。失敗するから成長するのだ。わからないことをわからないとはっきり言うから、教えてくれと頭を下げるから、理解ができるチャンスが生まれるのだ。
それができない人間に進歩はない。私はそう思っている。
Kさんは今日からもう、彼がさっぱりわからんとあきらめていたツールを使いこなせるだろう。わかってしまえばそれは新しい武器になるのだ。
彼へのオンライン講義が終わった後ウィスキーを飲みながら一人喜びに私は浸っていた。生徒の成長が、私には何よりも喜びなのだ。